夜泣き治しの呪文

2008-06-25

夜泣きの治しの呪文


貴州省の西部、中国最大の滝である黄果樹近くには、プイ族というタイ系の民族が住んでいます。タイ系らし
く平地の水の豊かな場所に住んで水稲耕作をしている人たちで、藍染の黒地の衣装に、こまやかなろうけつ染めの幾何
学的文様がよく似合います。


そんなある村の土地神さまの祠の脇に、こんな呪文が貼ってあるのを見つけました。


天黄地黄 天黄地黄


小孩夜哭 子供が夜泣き


君子念過 君子様に読んでいただければ

睡至日出 ぐすっすりやすらか日の出まで


    夜泣きの呪文


じつはこの種のおまじないは、かつて中国ではどこでもみられたほど広まっていたものでした。

「天黄地黄」(ティエンホゥアン・ティーホゥアン)の出だしは、「天皇皇、地皇皇」」(ティエンホゥアンホゥアン・ティーホゥアンホゥアン)の出だしで始まることが多いです。


天皇皇地皇皇    天皇皇地皇皇

我家有个夜哭郎   うちには夜泣きの男の子 

来往君子念三遍   往来の君子様三回読み上げてくだされ

一直睡到出陽   さすればお日様出るまでやすらかに


などという文句が一般的だと思います。

夜泣きで寝付けない子供をあやしつつ、お母さんかお父さんが墨をすってまじないを書き、
誰もいない夜道に出て、こっそり家の前の電信柱や壁に貼っておきます。


通りすがりの人の力を借りて、夜泣きを鎮めるという観念が面白いです。


通りすがりの君子様は、ときどき頼りになる存在です。


たとえば、雲南省の大理地方では、ペー族や漢族子供が病弱だと、朝早く橋のたもとに行き、最初に橋を
渡った人に仮の親になってもらい、子供の健康を守護してもらう人になってもらいます。
子供の名前に「橋」の一字をつけ、たとえば張橋貴などと命名します。橋や大樹や神に親代わり
としての保護を頼む意味もあり、これを「寄名」(チーミン)というのです。