あのこはだあれ─ナツメに込められた願い

2007/10/04

今年の春に山西省の黄河流域地帯にしばらく滞在しておりました。
どこまでも黄色い荒れ果てた丘陵地帯で、埃まみれの土地でした。
そんななかで、市場で売られる深い紅色に熟した干ナツメだけが、
わずかな柳の緑とともに、目に鮮やかに映るのでした。

「紅棗」(ホンザオ)といって、真っ赤なそのナツメは、
黄河流域の名物です。

熟し切ったナツメのことです。



       紅棗


荒涼とした黄土高原では、果物といえばもともとそれぐらいしかなく、
それでも干ナツメを口に含むと、苦みを含んだ、コクの強い甘さが口に広がり、
結構な美味なのです。
いままさに仲秋、この時期は月餅の餡などに加工します。

童謡「あのこはだあれ」にナツメが出てきます。
「あのこはだあれ だれでしょね なんなんナツメの花の下
・・・ 」。
小さな淡い黄色の花が咲くナツメの木、田舎の山里の農家にも、
時折植えられています。
秋、たわわに実ったナツメが枝を重くしならせています。

ナツメは農家に有利な換金作物として、
飛騨の山中の村里にも多く植えられています
「桃、栗3年、杏は4年、梨は5年、棗は、その年金になる」というそうです
(出典:e-yakusou.com「薬用植物一覧表」「ナツメ」)。
ナツメは、南ヨーロッパかアジア西南部原産でも8世紀にはすでに入ってきていました。

ナツメの中国語「棗子」(ザオツ)は、子供が早くできるようにという意味の中国語「早子」
(ザオツ)に通じて、子宝と多産の祈りを込めて、庭先に植えられます。
中国人にとって幸運をもたらす果樹として喜ばれているナツメ
ですが、木々いっぱいに鮮やかに稔る光景をみると、
それもまたむべなるかなと納得させてくれるのです。