漢民族の民間信仰─神と祈願

2007/10/14

漢民族が日常的に祈願する神は多数あります。
日常的に祈願する神を祭祀目的別に紹介します。事例は雲南省大理市の漢族の場合です。

a.家庭などの平安無事(「清吉平安」チンジーピンアン)
玉皇大帝(天上の朝廷に君臨する天帝)、観音菩薩、土地神(土地の神、村の守護神)など、多くの神が祈願の対象となる。
もっとも頻繁になされる祈願がこの種の祈願です。

b.農作物の生長無事(「風調雨順」フォンティヤオユィーシュン)
玉皇大帝は、天界を司る最高神で、天上の朝廷である「天庭」(ティエンティン)におり、地上の人々の行いを監視し、自然界の秩序も司ります。
天庭には、風を司る風部、雨を司る雨部、雷を司る雷部、稲妻を司る電部、伝染病を司る瘟部などの部署があります。
農作物の生長無事は、玉皇大帝に仕える天庭の関係部署の神々に祈願し、雨師(雨神を指す)、風伯(風神を指す)、雷公(雷神を指す)、電母
(稲妻の神を指す)などが関わります。
とくに雨乞いにはこれら玉皇大帝を頂点とする天庭諸神に対して、道教の祭司である道士を招いて祭祀したり、龍神を祀る龍王廟に行き、「龍王」
(ロンワン)を祭祀することが多いです。

c.農作物の豊作祈願・五穀豊穣(「五穀豊登」ウーグーフォントン)
農作物の豊収に直接関わる神としては、田の神に相当する田公・地母(ティエンコン・ディームー)や龍王の祭祀が欠かせません。とくに田植えの前には田の
取水口これらの神を祭祀し、田植えが終わった後や稲刈りの際も祭祀します。
d.商売繁盛・財産繁栄(「生意興旺」ションイーシンワン)
財産繁栄の神である財神は、古典小説『封神演義』に登場する黒虎に騎った武人の趙公明や、『三国志演義』の主人公の一人、
関羽などです。財神の誕生日に財神廟に行き、鶏や魚、肉料理を捧げて祭祀したり、家庭に財神の像を祭祀し、日々線香を捧げます。
とくに商売人はかならず祭祀します。

e.子孫繁栄(「人丁興旺」レンティンシンワン)
子宝祈願の女神として子孫娘娘(ツースンニャンニャン)がおり、子孫娘娘廟に行き祭祀します。子孫がいないと、一族の祭祀が途絶えてしまうだけに重要です。
子孫娘娘は『封神演義』の話に合わせ、趙公明の妹たち三姉妹ともいわれます。

f.家畜繁栄(「六畜興旺」リュウチューシンワン)
家畜神として六畜大王(豚、馬、羊、牛、鶏、犬など、家畜の健康と繁栄を司る神)、水草大王(牧草の神)、馬神、豚神などの神がおり、
家畜小屋などで祭祀します。家畜が伝染病予防に祀る意味もあります。

g.その他の神々
このほか、門の守護神である門神や、かまどの守護神である竈神老爺、村の境界の守護神である橋神、路神、山で作業する際に祈願する山神など、
日常的に祈願する神は多いです。試験の合格には、学問の神である文昌帝君や、合格者を守護する魁星(天文学上の星宿、奎宿を象徴する)、
聖人孔子などに祈願し、文昌宮、魁星閣、文廟(孔子廟)に参拝します。また、祖先の冥界での平安無事を祈願するため、冥界を管轄する神である
東嶽大帝、死者を含めた衆生を救済する地蔵菩薩などを、それぞれの寺廟(東嶽廟、地蔵寺)で参拝します。

以上、雲南漢族の祈りの世界を、簡単にまとめてみましたが、日常生活に必要な祈願はたいへん単純な、当然ともいうべき内容です。それにいろい
ろな想像力が加わり、だいたい400柱くらいの神々が、雲南の漢族居住地域で信仰されています。